高くジャンプ、でもゆっくりと着地する
彼女を原付バイクの後ろに乗せて送ることになった。
どこまで送れば良いのかは聞いていない。
しばらく走ると、「この辺でいいよ!」というので、逢魔時※、彼女はバイクから降りた。
すると前方から一台の車がやってきて、その車に彼女は乗り込んだ。ヘッドライトが眩しくて誰が運転しているのかわからない。
「さて、帰るか…」
私は今来た道を戻った。
途中にある歩道橋にさしかかった時、
「あっ、ヘルメット被っていないや。」
と気がつき、バイクを押して歩き、歩道橋のスロープを利用して片側二車線の道を渡った。
突然場面が変わり、私は交通量の激しい幹線道路の中央分離帯に立っていた。
中央分離帯といっても、グリーンベルトがあるわけでもなく、ガードレールがあるだけで、物凄いスピードで、ギリギリのところを減速することもなく、車が通過している。
私の右側(左車線にいるので、進行方向後ろ)にも沢山の人達がガードレールに張り付くように立っている。
ドドドッという鈍い音と共に、その人達が次々とひかれている。
私の右腿に何かぶつかったような感覚がした。しかしとても鈍い感覚だ。
見ると肉の塊である。
「人間は水でできているから、潰れたらこんなもんかな。」
と呟きながら、さらに聞こえてくるドドドッを感じた。
すると突然、対向車線を走る車が一台もいなくなった。
静まり返った対向車線を、これから世界中で大ヒットするという、日本人ではない女の子が現れ、歌いはじめた。
状況が今ひとつ把握できないが、その歌を聴きながら、私は自分が立っている車線の路肩歩道へ戻ろうとした。
相変わらずこちら側の車線は、ドドドッが鳴り響いている。
「ホッ!」
大きくジャンプすると、二車線を一気に飛び越えて、しかしゆっくりと歩道に降り立った。
歩道には沢山の人が歩いているのに、誰も私が飛んで降りてきたことを気にかける様子はなかった。
気がつくと朝でした(笑)
※逢魔時…【Wikipediaより】逢魔時(おうまがとき)、大禍時(おおまがとき)は、夕方の薄暗くなる、昼と夜の移り変わる時刻。黄昏どき。魔物に遭遇する、あるいは大きな災禍を蒙ると信じられたことから、このように表記される。
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